新・mespesadoさん講義(37)損得で測れる世の中ではないのに
コロナワクチンは発症だけでなく感染も予防する、わかり始めた大きな効果
https://news.yahoo.co.jp/articles/a55201885278c3e0a2806a96710eb413ebd06178?page=1
↑ワクチンの効果に関する記事。
結構長い文章だが、書かれているのはすべてワクチンの効果に関することだけであり、ワクチンの副作用については一切書かれていない。ただ、書いた人に悪気があるようには思えなかった。単に書いた人にとってはワクチンの効果だけが関心事なのだろう。
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インド由来の変異株について分かっていることは?二重変異ってどういう意味?
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20210425-00234435/
↑変異株とか二重変異とはどういうことか、何が危険なのか、について書かれた記事なのだが、その危険性については、「ワクチンが効きにくい」とか「再感染のリスクが高い」ということが述べられているだけで、一番肝心な、感染した場合にどの程度重篤な症状になるのかについては何も書かれていない。これもまた、書いている人に悪気があるわけではなく、おそらく「コロナにかかることそれ自体」を問題視しているので、コロナがワクチンで治るのか、再びかからずに済むのか、というレベルでしか関心が無いからこういう記事になるのではないか。
両記事を通じての感想として、あることがらに対する議論が、新たな事実の発見とともに深まっていくとき、その都度追加される話題の中で注目された話に興味が移っていき、一番最初の「最重要課題」が何であったか、ということが忘れ去られていく、というよくあるパターンに世間の関心やら情報発信者が乗っかってしまっている、ということなのだろう。
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コロナワクチンは発症だけでなく感染も予防する、わかり始めた大きな効果
無症状感染も防げるのか? 他人に感染させるリスクは? 進む研究
新型コロナワクチンは、ウイルスの感染拡大を緩やかにし、パンデミックを収束させるチャンスをもたらした。専門家たちは今、ワクチンが感染の発生をどの程度抑えられるかを見極めようとしている。米疾病対策センター(CDC)の新たなデータでは、接種後も新型コロナに感染するケースはあるが、非常にまれであることが示された。
CDCによると、4月14日までに米国でワクチン接種を完了した7500万人強のうち、5814人が新型コロナに感染した。そのうち45%は60歳以上だった。また、7%が入院、1%が死亡した。現在、米国で接種を完了した人は8800万人近くに上っている。
CDCは、接種を完了した人々のための安全な行動の指針を慎重に緩和してきた。緩和に慎重だったのには理由がある。ワクチンがどれほど発症を予防するかだけでなく、接種を完了した人が無症状感染者になり、知らない間に他人にウイルスを感染させる可能性があるかどうかを見極めるデータを待っていたためだ。
ワクチンは第一に、感染そのものではなく病気になること、すなわち発症を防ぐものだ。この区別は重要だが、多くの人はこの点を認識していない。つまり、どんなワクチンでも、接種を終えた人が他人にウイルスを感染させないようにできるとは限らない。 「ワクチン開発の究極の目標は感染そのものを阻止することですが、その達成はとてつもなく困難です」とカナダ、マニトバ大学のウイルス学助教授ジェイソン・キンドラチュク氏は話す。“殺菌免疫(sterilizing immunity)”と呼ばれるこの究極の目標は、疾病から完全に人を守るだけでなく、そもそも病原体の細胞内部への侵入を阻止することにあるという。
米食品医薬品局(FDA)が最初の新型コロナワクチンを承認してから4カ月。CDCは、ワクチンが感染者数を大幅に減らし、結果として接種を受けた人が他人にウイルスを感染させるリスクを低下させることを示唆する十分なデータを得た。
ワクチンが人々を守る仕組み
ワクチンは体内で感染を模した働きをして免疫システムをだまし、病原体に対する防御力を備えさせる。そして、次に同じ病原体を認識した時のための対策を記憶させる。そう説明するのは、米カリフォルニア大学リバーサイド校の微生物学助教授ジュリエット・モリソン氏だ。
感染後は「体内の白血球、特にT細胞とB細胞が最初の感染を記憶しているので、再び感染すると、こうした細胞がたちまち増殖して対応します」。B細胞は抗体を作り出し、T細胞は感染した細胞を破壊する。
ワクチンは感染時と同じこうした免疫記憶をもたらすので、本物のウイルスが現れた場合でも、免疫システムは即座に作動し、T細胞、B細胞、抗体を産生する。 「この仕組みのおかげで、私たちは感染したことにすら気づかないまま、感染から抜け出すことができるのです」とモリソン氏は言う。
しかし、ここで重要なのは、その人が実際には感染していたという事実だ。つまり、ウイルスは細胞内に侵入し、複製を開始していた。だが免疫システムがそれを完全に制圧したので、発症には至らなかっただけなのだとキンドラチュク氏は説明する。
無症状感染でもウイルスを他人にうつす可能性がある
ウイルスが細胞に侵入し複製を開始しても発症に至らない場合は、無症状感染となる。対して発症前感染(潜伏期間)の場合、感染者は後に症状が現れるが、新型コロナウイルスでは発症前の数日間の感染力が特に高いと、米フロリダ大学の生物統計学助教授ナタリー・ディーン氏は話す。 「ワクチンとは無関係の接触者追跡データから、無症状の人は感染力が低い傾向にあることがわかっています」と氏は言う。
無症状感染者はおそらく優れた初期免疫反応をもっていて、ウイルスの複製を抑えられるのだろうとモリソン氏は考えている。「それでも、ウイルスの複製を完全に止められるほどではないのです。ですから無症状感染者は、症状が何も現れなくてもウイルスを排出していることがあります」
キンドラチュク氏によれば、新型コロナ感染症の重症度が体内のウイルス量と相関する傾向にあるという事実が、これに根拠を与えている。ウイルス量が少ない人は他人に伝播させるウイルスの量も少ないことが2月2日付けで医学誌「The Lancet Infectious Diseases」に発表された研究で示されており、無症状感染者の感染力は発症した感染者よりも低いことが示唆される。だが、感染力が低いといってもゼロではない。無症状感染者は、体内に複製を続けるウイルスをもっており、他の人に感染させる可能性はある。
ワクチンが承認された当時は、ワクチンが感染を完全に防げるのか、それとも接種を受けた人が感染力のある無症状感染者となるのか、専門家にもわかっていなかった。
なぜ治験では感染予防効果が評価されなかったのか
米モデルナ製、米ファイザー・独ビオンテック製、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製の各ワクチンが臨床試験(治験)で評価されたのは、ウイルス感染を阻止する能力ではなく、重症化を防ぐ能力だった。 入院する人の数や死者数が1日あたり何千人にも上るなかでは、重症化や死亡を防ぐ効果を測ることが最優先だった。研究者は、無症状感染を防ぐ効果の評価も重要だと認識していたものの、それは非常に難しく、コストがかかることだったとディーン氏は言う。そのため、接種を受けた人が無症状感染になりうるかどうかという謎は残った。 「(接種後も)まだ鼻からウイルスを排出し、感染力をもつことがあるのかどうかは、はっきりしませんでした」とディーン氏は話す。接種を受けた人が排出するごく少量のウイルスでも、他人にとってはリスクとなりかねない。 「感染にはどれだけのウイルスが必要なのかという点についても、まだあまり解明されていません」とキンドラチュク氏は言う。「一瞬に接触するウイルスの量ではなく、数分から数時間かけて累積する量が問題なのです」
初期のデータでは有望
ワクチンメーカーは、第3相臨床試験の参加者全員の感染状況は追跡しなかったが、ある程度のデータは収集した。モデルナ社は、2回目の接種時に全参加者を検査し、1回目の接種後、プラセボ(偽薬)グループよりもワクチン接種を受けたグループのほうが、無症状感染が少なかったと12月にFDAに報告し、発表された。
同じくJ&J社も、約3000人の第3相臨床試験の参加者を対象にした検査結果を報告した。これは、接種後に新たな感染による抗体が生じたかどうかを確認するため、接種から2カ月後に検査を行ったものだ。初期データは、プラセボグループと比べて無症状感染を74%減少させることを示唆していた。
こうした結果から、ワクチンには感染を防止する能力があることが示唆された。その後発表された3つの査読前(プレプリント)論文が、さらに吉報をもたらした。そのうちの1つ、2月8日付けでプレプリントサーバー「medRxiv」に発表された論文は、ファイザー・ビオンテック製のワクチンを1回接種したPCR検査陽性者は、接種を受けていない感染者よりもウイルス量が最大で20倍少なかったことを明らかにした。
米メイヨー・クリニックが2月27日付けで「medRxiv」に、英イングランド公衆衛生局(PHE)が2月22日付けでプレプリントサーバー「Preprints with The Lancet」にそれぞれ発表した論文では、ファイザー・ビオンテック製ワクチンの接種を完了した医療従事者計8万5000人以上の定期的な検査結果などが報告され、ワクチンが感染例を85~89%減少させたことが示された。これらのエビデンスから、3つのワクチンすべてが、接種を受けた人の大半に感染防止効果をもたらすことが明確になった。
さらに集まるエビデンス
その後、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンに関する多くの論文から、さらにエビデンスが集まった。2月18日付けで医学誌「The Lancet」に掲載された、イスラエルの医療従事者9109人を対象とした論文では、ファイザー・ビオンテック製ワクチンの1回目の接種から15~28日後について、未接種に比べて感染例が75%少なかったことが報告された。また、3月29日付けで医学誌「Nature Medicine」に掲載された論文では、接種を1回受けた後に感染した人の場合、未接種に比べてウイルス量がおよそ3分の1から4分の1に減ったことが明らかになった。
3月10日付けで医学誌「Clinical Infectious Diseases」に掲載された、3万9000人以上の感染状況を調査したメイヨー・クリニックによる論文では、mRNAワクチンの1回目を接種した10日後には感染のリスクが72%減少、2回接種後には80%減少していた。
ディーン氏によれば、最も強力なエビデンスは、4月2日にCDCが発表した研究結果だ。これは、mRNAワクチンを2回接種した3950人の医療従事者を3カ月にわたって毎週検査したものだ。症状の有無にかかわらず、2回接種では感染予防効果が90%にのぼり、1回接種では80%だった。
キンドラチュク氏は、そこらじゅうにエビデンスがあると言う。「米国では、感染の大幅な減少が起きています。これは、ワクチンが重症化を防止しているだけでなく、感染を減少させていることを示唆しています」
エビデンスを総合的に見ると、mRNAワクチン(モデルナ製またはファイザー・ビオンテック製)の接種を完了すれば感染リスクが減少することが示されている。感染リスクは、1回目の接種で少なくとも半分以下に、2回目接種の2週間後には75~90%減少する。DNAワクチンであるJ&J製のワクチンに関する研究はまだ少ないが、治験の結果から、感染は70%以上抑えられると見込まれている。ワクチンは、接種した人の感染を大幅に防ぐことで、感染の連鎖もせき止めていることになる。
変異ウイルスとの戦い
目下の懸念は、変異ウイルスがこの流れをどれほど変えるかだとキンドラチュク氏は言う。ファイザー・ビオンテック製ワクチンについてイングランドとイスラエルで行われた研究の一部は、変異ウイルス「B.1.1.7」が優勢になった状況下で実施された。 「ワクチンは変異ウイルスに対しても負けていませんが、変異ウイルスは感染力がより強い傾向があります」。感染力が強ければ、より少ないウイルスで人に感染してしまうことになると氏は懸念している。そのため変異ウイルスの無症状感染者は、従来ウイルスの場合より他人への感染力が強い可能性がある。
さらに、ファイザー・ビオンテック製に比べると、モデルナ製とJ&J製ワクチンについてはB.1.1.7に対する感染予防効果のデータが少なく、南アフリカで最初に発見された「B.1.351」やブラジルで見つかった「P.1」に対してはほぼデータがない。この2つには、他の新型コロナウイルスの抗体をある程度回避する能力があることが示されている。
専門家は、変異ウイルスの複製能力についても研究を進めている。 「複製能力が高ければ、ウイルスの排出量が増えて、感染のリスクも高くなるかもしれません」とモリソン氏は話している。
それでも見通しは明るい
変異ウイルスがもたらす不確実性はあるものの、ディーン氏は現時点での全体像に不安はないと語る。 「これらのワクチンは、多くの点で私たちの期待をはるかに上回っています。重症化を予防するだけでなく、他人に感染させることも防いでくれるというのは、非常にすばらしいことです」と氏は言う。「100点満点ではないにしても、誰もが感染の大幅な減少とその価値を理解できるでしょう」
だが、用心はもう不要ということではないと、モリソン氏はくぎを刺す。 「ワクチン接種を済ませたら、重症化が予防でき、感染から十分守られている可能性が高くなったと考えていいでしょう。でも、変異ウイルスは次々に生まれていますし、私たちは集団免疫には程遠い状況です。今後も用心を怠ってはなりません」
CDCは接種済みの人々に対し、マスクや距離の確保なしで未接種の人を訪問する場合は、単一世帯かつ重症化リスクが低い相手に限るよう推奨している。今も毎日、非常に多くの人が新たに感染している。接種を終えた人が、まだ接種を受けていない人の家を訪問して感染したり感染させたりする可能性はある。そうしたリスクを、CDCが推奨する制限で抑えることができるだろう。「接種を受けていない人との接触が、とても心配です。未接種の人が、接種済みの人に感染させる可能性は低いのですが、ゼロではありません」。逆も同様だ。接種済みの人が感染した場合も、未接種の人あるいは病気や薬剤投与で免疫力が低下している人に感染させるリスクは低いが、ゼロではない。
ワクチン接種が拡大すればするほど人々の感染リスクも低下するとディーン氏は言う。 「私の地元でも、まだ感染状況から目が離せませんが、集団レベルのワクチンの効果が見られるようになってきました。しかし、1人ひとりの接種が積み重なることで、より安全に交流できる環境が少しずつ整ってくるでしょう」
文=TARA HAELLE/訳=稲永浩子
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