副島隆彦『有事の金。そして世界は大恐慌へ』

G20財務相会議、日本は退席せず 米英などと別の対応

【ワシントン=江渕智弘】20カ国・地域(G20)が20日に米ワシントンで開いた財務相・中央銀行総裁会議で、鈴木俊一財務相は途中退席せずに最後まで参加を続けた。イエレン米財務長官など米英とカナダの参加者はロシア側の発言が始まる前に席を立っており、主要7カ国(G7)でもロシアへの対応で足並みが乱れた。
ウクライナへの侵攻を続けるロシアはシルアノフ財務相がオンライン形式で参加し、財務省高官が現地で出席した。G7各国は事前にロシアの欠席を求めていた。ロイター通信によると、イエレン氏と英国、カナダの参加者がロシア側の発言が始まる前に席を立った。
サキ米大統領報道官は20日の記者会見で、イエレン氏がG20財務相会議で一部の会合を欠席したことについて「明確に支持する」と表明した。「プーチン大統領とロシアが国際舞台でのけ者になっている事実を示すものだ」と指摘した。
日本の財務省関係者によると鈴木氏は同調しなかったという。G20会議の終了後、G7は別に財務相・中央銀行総裁会議を開いた。
先日、ロシアが参加するアジア太平洋地域の国際会議に出席した。現在の国際社会が直面する三つの困難があり、予想以上に深刻なことを痛感させられた。
第一は世界経済の基盤である国際秩序に生じた亀裂の深さだ。ロシアの会議参加が証左である。ウクライナに侵攻したロシアは力による現状変更を試み、国際秩序を揺るがした。だが、同国には世界や地域の経済の安定を目的の一つにする会議への参加資格はないと断じた国は日米など少数の同志国のみである。多数の国はロシア批判をためらう。これが世界の現実だ。
第二はロシアの参加を容認した国々は経済が何より大事でグローバル化を止めたくないと考えていることだ。驚くべきことにロシアも同じ考えである。米中対立とロシアの侵攻が脱グローバル化に流れを変え拍車を掛けてしまったと認識し、それに応じた世界や地域の協力体制の修正が必要だと認識する同志国との距離は広がる一方である。
第三は国際協力の枠組みの多くが参加国・地域の協力は続き、国際秩序に挑戦する国など現れないという性善説を下敷きにしていることだ。20カ国・地域(G20)やアジア太平洋経済協力会議(APEC)に特定国を排除するルールはなく、今年のそれぞれの議長国インドネシアとタイはルールに従ってロシアを閣僚会議に招待する方針を示す。反対する同志国にも議長国を説得できるすべがない。しかしロシアが参加する会議はまとまらない。国際秩序の修復や世界経済の安定へのメッセージを打ち出せないで終わる可能性が高い。2008年の金融危機の際、世界は団結して危機を乗り越えることができた。
しかし、国際協調は揺らぎ、G20もAPECも機能不全に陥り抜け出せなくなる恐れの方が強まっている。冷戦、いや第2次世界大戦以来の試練に直面している。世界景気と国際金融市場の先行きには悲観的にならざるを得ない。
(丸紅執行役員経済研究所長 今村 卓)
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